それもまた夢だと笑えばいい その2

−それもまた夢だと笑えばいい− その1

 

何事もなく毎日が過ぎ去る。

同じことを繰り返して、楽しく過ごす。

仕事も問題ない。やり甲斐も感じている。必要とされてもいる。

何かしら大きなストレスがかかっているなんてない。

あの寝汗をかいて起きることとなったあの体験は繰り返されることはない。

日々の忙しさにその日中に忘れてしまっていたほどの、程度の軽い事柄であった。

 

32歳、独身、会社員、長男であるが、妹二人いて、二人とも嫁いでいる。

実家は新潟、今の住まいは埼玉の川口市ってところだ。

どこにでもいる普通のサラリーマンである。愚痴も言えば、見栄もある。

人に弱みを見せたがらず、どこかしら斜めに見る癖がついており、人とは深く付き合わず、毎日の通勤に揺られて物思いに耽るのが日課になっている。

 

満員電車に揺られながら、家路に向かう中、一日を振り返っていた。

後輩が仕上げた仕事の不備を見つけたことだ。

慣れぬ仕事もわかるが、同じようなミスを立て続けて三回も繰り返されると、ため息しか出てこなくなる。

懇切丁寧に教えて来たことの全てが、無駄だと突きつけられたようで、間違えた後輩よりも、指導出来ない自分に問題があるように思えた。正直、苛立ちが収まらない。少なくとも社内では、後輩への面倒見がいいと言われてはいるはずだった。

考えさせても、一から十まで指示しても、それでも間違いを自分で気づけないとなると、手の打ちようがなくなる。本人も間違えようとして間違えているとは思えない。物腰も丁寧だし、返事もいい、嫌味なことは他の仕事は問題ないらしい。他の連中に相談してみると、口を揃えて「物覚えが良い子」と高評価と来たものだ。何かの嫌がらせか? と勘ぐってしまいたくなる。

取り分け可愛いという部類でもないが、記憶に残るような特徴がある子でもない。入社三年目、新人とはもう呼べない。ただ4月に配属が変わって慣れないのはわかるが、明らかに見直していないとしか思えないミスの連続なのだ。

取り立てて新たな手立てが見つかることもなく、目的の駅について、「すみません」を繰り返す、24歳の化粧っ気のない彼女を「見直してから出すように」と指示している自分とのやり取りを何度も思い出しているのをかき消して、電車から降りた。

 

その日の晩、寝つけなかった。

早めにベッドに潜り込んだのがいけなかったのか、何度寝返りを打ったことか。

考え事をしていようが、普段の疲れの前にはさっさと寝てしまうものだが、時々こんな日がある。

今日も、そんな日なんだなと、寝つけない自分に対して冷静なツッコミを入れつつ、起きて本でも読むか、このまま横になって休めておくか、思案していた。起きて何かしようという気にもなれず、布団の中でゴロゴロして湧き上がる思考の渦の中で、たわいもないことを浮かばせては流していた。

 

「あなたのせいよ」

 

浮かんでは流れていく思考の渦を繰り返して見ていたら、その思考の声だけがはっきり聞こえていた。しかも女の声だが、特別聞き覚えがあるわけじゃない。あれ? 何だろう? と思っている間に眠りに落ちいてた。

 

そして30分と経たず、寝汗をかいて目が覚めることとなった。

 

 

 

眠りを妨げるものは、許しません。安眠を取り戻して行くぞ!!


SNSでもご購読できます。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。