それもまた夢だと笑えばいい その5

−それもまた夢だと笑えばいい− その1 その2 その3 その4

 

何事もなかったかのように出勤した。浮かび上がる昨夜の出来事を何度も遠ざけて仕事に集中した。手が止ると考えてしまう。それに気づくと、仕事を拾い集めて、忙しくさせた。

幸いにも没頭すれば、考えずに済む。

気持ちを切り換えればいい。

これまでもそうしてきた。

仕事中に他ごとに囚われて、仕事が疎かになるなんて論外だ。

この日は、これまで以上に人に優しく接していた。

 

帰りがけに、この間の子が謝ってきた。

何が? とは思ったが、口には出さない。

うまく言葉に出来ていない気もするが、何か私に対して思うことがあったらしい。

「誤解していました」

それで? と思うが、それも口にはしない。

一方的に謝られて、仕事のミスを私の扱いが他の人と違うことに対しての不快感が募っていたという。

はぁ? 仕事舐めとんのか? と湧き上がるが、平静は一切崩さない。彼女なりに精一杯やっていることは明白だ。それを追求したところで、聴く耳を持つものでもない。何もせずとも、気づく奴は気づく。ただ、今日の私の態度が異常に優しくなっているのは、自分でも少し自覚していた。それで、この子の気が晴れて、仕事が回るならお安い御用だなんても思った。

 

仕事は仕事だ。

感情も、考え方も、勤務中はそれに尽くす。

当たり前のこと。

雇っていただいているんだ。

雇われてやっているんだ。なんてガキ臭い連中は鼻につくが、そういう人とは関わらないでいる。それが互いのためだ。

 

「こちらこそ、何か不愉快な気持ちにさせていたみたいで、済まなかった」

 

状況から、どうやら原因はわたしにあるらしいから、謝らないと格好がつかない。

 

 

その姿に感激したようで、嬉しそうに去って行く。

 

 

その姿を見て、ため息をついた。

 

 

人の心はわからんものです。

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