それもまた夢だと笑えばいい その6

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会社を後にしたオレは、いつもの道を家路に向かって歩いていた。

定時に上がることが出来たのは久し振りのこと。気持ちがいい。

まだ外は明るい。

街路樹に新緑が風に揺られて、心地よい五月の風が吹いている。

緩やかな坂道を下りながら、足取りは軽く、街も何だか陽気に感じられる。

本屋か、電気屋か、時間があるときのお決まりのコースを思案して歩く。

足は自然と電気屋街の方へと向かっていく。

店頭に並ぶ品々、その前で外国人客がごった返しているのも見慣れた景色となってしまっいる。大きな荷物をゴロゴロと。ゴロゴロと、邪魔くさい。

 

カメラを見て、パソコンを見て、ゲームコーナーをぐるりと見て回り、特に手にとって欲しいと感じるものがないとわかると、外へ出た。

少し疲れた。

電気街に来ると、妙な疲れがのし掛かる気がする。

圧というか、負う感じというか、気怠さか。

疲れているのだから、帰れよって自己ツッコミが入る。

飯でも食って、と視点と思考が飯屋に向かう。

 

中華飯店の看板が目に留まり、あれでいいかと入っていく。

ラーメンとチャーハンを頼み、水を飲んだ途端、心臓がバクつく。

ぎゅぅっと締め付けられる感覚に襲われ、胸元を掴む。

何だこれ。

理解出来ない状態に、全身から汗が噴き出してくるのがわかる。

倒れるのか?

意識はハッキリとしたまま。

落ち着くのか、つかないのか?

止りそうにはない。

これは良くない。

体温が下がっていくのもわかる、寒気が全身を包む。

あかん。

なぜ大阪弁と自己ツッコミが小さく入るが、それどころじゃない。

 

 

冷めたラーメンを前に、店員が異常に気づいたようで声をかけてきた。

手をつけることが出来ないまま、じっと出された飯を見ていた。

「あ、はい、考え事していたんで」

自分でももう少し言いようがあるだろうって思うが、耐えに耐え、倒れずに済ませられたことを自分に褒めていたりする。病院行けよって自己ツッコミが入るが、それは検討することにした。

申し訳ない程度に、ラーメンとチャーハンを少し食べ、お決まりの丁寧な対応で支払いを受け付けてくれて、ホッとする。注文して食わないなんて嫌味でしかない。にしても、病気か? 何なんだ? と疑問が渦巻いて足取りも重くなっている。まっすぐ帰れば良かったと、意味のないことを思いつくが、それを払う。

やっと電車に乗り込み、閉まった扉にもたれ掛かりながら、体の状態に意識を向け続けて行く。また発作がやって来ないか気が気でない。悪寒は続いている。

 

 

いつもは歩く5分の道のりをタクシーで帰った。

 

 

疲れたあなたに、「無理が好きなんだから」と鏡に向かって呟いてね。

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